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STEPHEN JONES INTERVIEW

周りの意見には耳を傾けずに、ただ自分の信じることを行いなさい

世界的な帽子デザイナーとして、還暦を迎えた今もなお最前線で活躍し続ける生ける伝説、ステファン・ジョーンズ。今回はそんなファッション界のヒーローに機会をもらい、話を聞くことができた。

どのようにキャリアをスタートさせたのか教えて下さい。

STEPHEN JONES(以下、S):たまたまチャンスがあって帽子作りをはじめました。テイラーの見習いには向いていないと感じていて、帽子作りのほうが面白く思えたんです。理由は色々あるけれど、固体の物を作ることが好きでした。私にとってそれは目に浮かびやすいものだったからです。その当時、1976年のロンドンは、まさに〝パンク〞の時代でした。パンクが世界を占めていて、あの頃はシステムに逆らうことが全てでした。

貴方のその素晴らしい帽子作りには、どのような哲学があるのでしょうか。

S:機能性とファンタジーのミックスをいつも意識しています。その機能が結局のところファンタジーだったとしてもね。私の哲学は〝変化すること〞。帽子のどこが好きかというと、その目新しい価値や非永続性といった側面です。私は一瞬のためだけに存在するものが好きです。言わば一種の楽観性のようなものだと思うし、それはファッションにおいて重要な価値の一つだと思います。

この世界で長く働いていらっしゃいますが、これまでのキャリアの中で最も記憶に残っているものや瞬間は何ですか?

S:まったく異なる出来事だけど、ひとつはウェールズ公妃ダイアナのハットを作ったこと。もうひとつはパリで働きはじめたときのことだけど、クリスチャン・ディオールで初めて仕事をしたとき、グレーのカーペットを敷いた階段に近づいていくと著名なハリウッドスターの写真がずらりと並べられていて、その光景がとても印象的だったこと。それらが記憶に残っている出来事です。もっと最近の出来事でいうと、ロンドンで開催されたマティ・ボヴァンの2018年秋冬コレクションでバルーンの帽子を作ったことも印象深かったです。

仕事をする上で最も大切にしていることを教えてください。

S:それは楽しむことを心がけること。

アンナ・ピアッジ、川久保玲、ジョン・ガリアーノ、トム・ブラウン、ゴーシャ・ラブチンスキーと仕事をした際のエピソードを聞かせてください。

S:アンナ・ピアッジと仕事をしていた頃、彼女はよく電話をしてきました。あるとき「スティーブン。わたしボートレースをはじめるのよ」と言うので「いつのことだい?」と聞いたら、「明々後日よ。アメリカズカップがあるんだけど、ミュウッチャ・プラダと一緒にピストルを鳴らす予定なの。ニュージーランドでね!」と彼女は答えた。それで下絵を描いて彼女にファックスしたんだ。すると彼女は「良いわね!でもヴェールはどこなの?ヴェールはどこなの?ヴェールはどこなの?」って。彼女はいつだってヴェールを探していました。ヴェールは何よりお洒落なものだと思っていたみたいだからね。川久保玲は東京で、私の仕事の25周年を記念したエキシビションをホストしてくれました。そのとき帽子職人25周年記念にと、私の帽子に模した巨大なケーキを用意してくれたのです。感動しました。玲は素晴らしいユーモアのセンスの持ち主です。ジョン・ガリアーノと仕事するのはとてつもない経験です。当然ながら、彼は帽子についても詳しい。彼のためにした仕事の多くは、私にとっても初挑戦のようなものばかりでした。ある意味、ジョンとの帽子作りで自信を持てたことは無かったです。常に期待をかけられていたので。でもあるショーのとき何日も帽子を作り続けていたんだけど、本当に最後の瞬間に帽子の中央に糊の染みをつけてしまったんだ。そのせいで帽子は最低の出来になってしまった。ジョンのところへ行って「作り終えたけど、本当に申し訳ないが酷い仕上がりになってしまった。でももうやり直す時間がないんだ」と謝った。半べそ状態でね。でもジョンはこう答えた。「心配ないよスティーブン。ちょっと音楽を大きくかけておこう。そうすれば誰も気付きやしないさ」って。トム・ブラウンとの仕事で印象的だったのは、彼が私のロンドンのアトリエに来て3日間、作業場で遊んでいたことかな。私がスケッチを描き、その場で試作品を作ったりして過ごしたのです。トムは自分の世界よりも私の世界について学ぶことにとても魅了されていたようでした。彼は自分の世界についてはもう理解していたし、何か別のことを見つけ出したかったみたいだったので。初めてゴーシャ・ラブチンスキーに会った時はエイドリアン・ジョフィーと一緒で、場所はロンドンのドーバーストリートマーケットにあるローズベーカリーだった。彼は世界で最もホットな若手デザイナーの一人と言ったところだよね。私の長年の大ファンだと言っていました。

帽子職人を目指す若者に、どんなアドバイスをしますか?

S:帽子作りは最高の仕事です! ものすごく浮き沈みのある世界ではあるけれど、とてもやりがいのある仕事です。小さな業界だからこそ関わる人たちはお互い協力的だし、結びつきの深いコミュニティーがあります。

最後に、クリエイターになりたい若い世代にアドバイスをください。

S:周りの意見には耳を傾けずに、ただ自分の信じることを行いなさい。結局は自分自身が全てだから。

INTERVIEW BY KAZUMI ASAMURA HAYASHI
TRANSLATED BY SUMIRE FUJIWARA
PORTRAIT BY FREDERIC ARANDA