DUNE libartane

RICHARD KERN INTERVIEW

興奮ってわけじゃなくて、ただビジュアル的に好きなんだ

セクシャルで、プライベートな面を露わにした女性との親密な関係をあなたの写真から感じますが、写真家としてどのようにして今のスタイルを築いたのですか?

Richard Kern(以降、R):もともとはシュルレアリズムだったんだ。モノクロでちょっと変な、いわば〝シュール〞な写真だよね。学生時代にファンジンをつくっていた頃、チェコに住んでいる文通友達ができたんだ。手紙のやりとりをしているうちに、まだ社会主義だったチェコの現地のフォトグラファーの写真集を送ってくれてね。チェコのシュルレアリストのフォトグラファーたちのもので、すごく影響を受けた。自分はフィルムのスチール写真をずっと撮ってたんだ。もともと反逆的な映画を撮っていて、よく考えればほとんどの設定がシュールだったから、チェコのフォトグラファーの写真も吸収しやすかったんだと思う。その後にエリック・クロールっていうフェティッシュのフォトグラファーに出会って、彼と遊び始めたんだ。彼の周りには裸の女の子が多かったから。それで荒木の作品にもハマって、ボンデージ調のモノクロのボヤけた写真を撮り始めたんだ。

それはいつ頃ですか?

R:90年代初期かな。その頃フィルム・スレットっていう会社が僕の映像を手掛けてたんだけど、彼らに写真集の話を持ちかけられたんだ。でも10~20枚しか写真を持ってなかったから、写真集のために女の子の写真を撮り始めたんだ。それで一旦映像をつくるのをやめて、写真に専念した。それで気付いたんだよ。女の子は写真を撮られるためなら脱ぐってことに。それで完全にハマったね。後腐れなく裸の女の子とハングアウトできたんだ。そんな流れで1990年から5年くらいはずっとフェティッシュでムーディーな写真を撮った。その頃の映画はすごく風変わりな色合いだったから、そこからインスピレーションも得た。あの時代の映画とかミュージックビデオの色合いはホントに変だったからね。派手な色が多くて。その後はもっとリアリティーのある写真を撮りたくなって、裸であることに理由があるセッティングで撮り始めた。この写真を撮るために脱いだんだな、っていう写真ではなくてね。ちょうどその頃、VICEがやっていたようなスナップショット写真が流行り始めてたし、乗っかってみようかって思ったんだ。そこからどんどん発展してった感じかな。たまに路線から逸れたけど。一時期アダルト雑誌の撮影とかもしてたし。『Barely Legal』,『Play boy』,『Tight』『Candy Girl』,『Jugs』,『Leg Show』とかね。

アメリカの雑誌ですか?

R:そう。でももうほとんど廃盤になっているけど。

全裸の女性を撮っていたのですか?淫らな感じで?

R:そうだね、そういう方向に時代が移り変わっていたんだよ。僕はロスのド派手なグラビアアイドルを撮ってた。その時代に撮り溜めた写真を本にしたのが、タッシェンが出版した僕の写真集『Action』なんだ。タッシェンの人が「これだけで写真集が出せる」っていうから、特に気に入ってるわけでもなかったんだけどとりあえず出してみた。結果的にそれが僕のベストセラーになったんだけど(笑)。その後はベッドとか浴槽を使って、1ヶ所でしばらく写真を撮り続けるっていうのを始めた。それで今のスタイルができたってわけ。

あなたの下着に対するこだわりを教えてください。好きなタイプはありますか?シルク素材のいわゆる高級な下着はあまり好きではないんですよね?

R:高級下着は嫌いでね(笑)。というのも、下着姿の女の子の写真を撮り始めたのは盗撮サイトの影響なんだ。セレブのパンチラや乳首ポロリ写真ばかり毎日投稿しているサイトが多発してた時があったんだよ。それで僕は、盗撮に見えるような写真ばかりの写真集を作り始めた。ミニスカートを履いている女の子を下から撮ったパンチラ写真とかね。女の子にパンツを履かせて撮った写真とそのパンツを一緒にフレームに入れて、ギャラリーで見せて売ったりしてた。このコンセプトは東京の文化にインスパイアされて思いついたんだ。その後、今から5年くらい前に『Face to Panty Ratio』という映像をつくったんだけど、それも下から撮ったパンチラ映像。ちょっと動くと髪の間から女の子の顔が垣間見えるんだ。

パンツの何に興奮するのですか?

R:興奮ってわけじゃなくて、ただビジュアル的に好きなんだ。

では、性的な好みってことではないのですね?

R:ただただ盗撮っぽい写真が撮りたかっただけ。しかも全裸で写真を撮らせてくれる女の子より、パンツを履いてなら写真を撮らせてくれる女の子の方が格段に多いし。その布切れ1枚があるとないじゃ、被写体にとってはやっぱり大きな差でしょう?「パンツ姿なら写真を撮ってもいい」っていう女の子も多かったから、スケスケのパンツを僕が調達してどのみち全部見えるようにした。

うまくやったんですね。

R;(笑)これじゃあパンツフェチに聞こえるな(笑)。まあそんな理由で、女の子がいつも履いているようなパンツが好きなんだ。Victoria’s Secretとかってみんなセクシーだと思ってるみたいだけど、僕は女の子が自然体でいる時のほうがずっとセクシーだと思う。あとはナイトガウンを着ている姿とか。道を歩いてて、通りかかった窓のカーテンの隙間からナイトガウンを着ている女の子がチラッと見えたりするとたまらないよ(笑)。女の子がセクシーになろうとして着飾ってる写真なんて全然撮りたくない。作り込んでる感じが嫌。だって普通1人で自分の部屋にいる時、セクシーな高級下着でうろうろ歩き回る女の子なんていないでしょう?

いないですね(笑)。

R:ERESとかは高級下着だけど、すごくシンプルで綺麗な下着を作ってる。それくらいかな、高級下着で好きなのは。Victoria’s Secretみたいなスタイルが流行ってたときもあったけど、最近は流行も変わってハイウエストやコットン、ブランドのロゴ入りのブリーフとかを履く女の子が多くなって良かったよ。でも1番いいのは、K MartとかWalmartで売ってる5ドルくらいのやつ。シンプルで最高だよ。

彼女にパンツをプレゼントしたりしますか?

R:ERESを買ってあげたいな。

彼女がTバックを履いてるのはアリですか?

R:どうなんだろう、あんまり考えたことないや(笑)。でも男の子みたいに見える女の子が好き。

被写体としての最高の女の子像はどんなものですか?

R:僕が昔一緒に仕事をしてた人で、ルーシー・マッケンジーっていうアーティストがいて。彼女は僕の要求を全て呑んでくれるんだ。羞恥心が全くなくてね。彼女、すごく成功してるアーティストだよ。VICEの表紙で女の子が便器の中で倒立してるやつ、見たことある?

あ~あれですね!分かります。

R:あれが彼女。彼女が撮影に来てすぐ、「あそこの便器で倒立とかってお願いできる?」って聞いてみたら、「いいよ。やってみるね」ってサラっとやってくれた。そういうモデルが1番いいね。仕事がしやすい。

あなとにとって1番興奮するものは?人、時間、食べ物、音楽、なんでもいいです。

R:今は、明日帰国して自分のベッドで寝れることを考えると興奮するね。

今回、日本は2回目ですね?前に来たのは30年くらい前でしたよね?

R:そうだね、80年代だった。

何か変わったことはありますか?

R:全てが変わったよ。前は英語表記がなにもなかったし、英語が全く通じなかった。通訳者に同行してもらわないとなにもできなかったし、それもすごく高いから大変だったよ。おいしいコーヒー見当たらなかったし、街の人の服装がとてもフォーマルだった。みんな似たような格好をしてたし。今じゃ窓の外を5分眺めるだけで、20人くらい全く違うスタイルの人を見つけられる。

前回はなぜ来日したんですか?

R:『Death Valley 69』で一緒に仕事したリディア・ランチと来たんだよ。彼女のライブのサポートとしてね。ジム・サールウェルも一緒だった。僕は自分の映像を展覧会で見せてたんだ。『Manhattan Love Suicide』だったかな。リディアは『Spoken Word』を歌ってた。僕らは3人で小さなホテルに泊まってた。今回は本当に過ごしやすかった。今もこうしてヴィーガンフードを食べてるし。

あなたが着目しているアーティストはいますか?もしくは長年フォローしている人とか?

R:いや、あまり。というか、才能あるアーティストは山のようにいるから、ここで数名だけあげるわけにはいかないよ。かれこれ35年くらいアートをみてきているけど、昔好きだった人が久しぶりに展示をやるって聞くと見にいったりはするね。どう変わったか見たいから。例えば、大学時代のとき、大きな影響を受けたのがクリス・バーデンっていうアーティストでね。僕が入学する前の年で卒業した先輩だったんだけど、卒業制作で自分をロッカーに閉じ込めて上と下からチューブを出してたんだよ。水分補給と用を足すためにね。その状態で3日間いたんだ。あとは友達に腕を撃ってもらったりとか。とにかく過激なパフォーマンスアーティストだったよ。びっくりした。

彼は大丈夫だったんですか?

R:大丈夫だったよ。まだ今も健在ですごくいいアートをつくっている。たまに見に行くよ。暗闇の中、裸でガラスの破片の上を這ったりしてるよ(笑)。70年代からそんなことをやっている人は他にいないね。

あなたは今なにかプロジェクトを始めたりしてますか?

R:ここ2年くらい、ずっと同じ女の子を何人か撮り続けているよ。レンズを通してなぜ彼女たちがモデルになりたいのかを写し出したくて。撮っているうちに目的が分からなくなっているところがあるんだけど。今までは全部自分でやってきたんだけど、今回はスポンサーやプロデューサーをつけてやってるんだ。はじめてのことですごく新鮮だよ。ここ数年で撮ったドキュメンタリーもたくさんあるから、その編集もやりたいなと思ってるよ。

TEXT, INTERVIEW AND PORTRAIT BY KAZUMI ASAMURA HAYASHI