DUNE libartane

MARK GONZALES INTERVIEW

マーク・ゴンザレス4年ぶりの東京、個展"Baby Don’t Mind"展を語る

昨年の秋にNYの街を歩いていると、スケートボードの音が後ろからしてきた。道行く人々が音のする方へと顔を向けているのでそれとなく振り返ってみると、マーク・ゴンザレスがパールペイントの大きな袋を下げて、プッシュしながらこっちに向かってくる。大声で名前を呼び、呼び止めるとなんだか訝しい顔つきで画材になる紙がたっぷり入った袋を抱えながら、買い忘れた物があり店に戻らなければならない、と挨拶を手早く済ませ早口で話しはじめた。久しぶりだからお茶でもしようと誘うと、とにかく彼は買い忘れた画材のことで頭が一杯な様子。画材屋に戻るから明日の午後3時にブロードウェイとプリンスストリートの角にあるディーンアンドデルーカでコーヒーを飲もう、と約束した。翌日約束の場所でおちあい、コーヒーを買って近くの教会に行き、新しいアートショーの話や彼の近況について話してくれた。エナジーに溢れる表情に、私はなぜかとてもうれしく思ったのを覚えている。彼に来日の予定があると聞き私達はすぐに日本での個展の話を始め、今回の“BABY DON’T MIND”展を開催する運びとなったのだ。

“スケート界の生ける伝説”と崇められるエキセントリックなヒーローは、2010年、当時白金にあったThe Last Galleryにて“INVITATION”展を開催した。つい最近、私生活において新しい扉を開いたともいえるゴンズ。4年ぶりに来日した彼は、新しいパートナーと8ヶ月になる女の赤ちゃんを連れてやってきた。彼は疲れた表情を見せることなく、個展やスケートのことを積極的に進めていった。そんなポジティブでモチベーションの高い彼をみて、彼のことを知っている人間はマークの調子の良さを、まるでグッドラックに出会わしたように口々に語る。「ゴンズの調子が本当にいいな」と。

4年ぶりですが、今回の来日はいかがですか?

MARK GONZALES(以下M):楽しんでるよ。スケボーしたり、今は健康的な食事をして気を使っているから気持ちも良いし。前回は楽しかったけど今回はもっと楽しいね。だけどリップジンガーをまだ見かけていない。どこいったんだろう?

東京にいないと思うわ。彼が東京にいれば絶対会いにくるはずだけど。

M:最近、彼は僕にひどい扱いをするんだ。面白いからこれもインタビューに入れてね。

日本でエキシビションを行われるのが決まって以来、作品を作るときに気にしていたことはありますか?

M:はい、無意識なのか意識的なのか分からないけど。この展覧会の為に初めはバナナシャンクを作っていたんだけど、その時に友達にあげるバースデイカードにたまたまダースベーダーの絵を描いたんだ。今回の展示にある作品みたいなのをね。そしたらダースベーダーの頭は侍の兜が元だって気がついて、剣を作りたくなったんだ。そこから鞘を人間の体にしたり。なぜか分からないけれど、日本での展覧会のための作品が、どんどん日本っぽくなっていったんだ。

バナナシャンクを最初につくり始めましたよね。

M:そう。立体のバナナを最初に作ったんだ。それからステンシル。前回の個展もステンシルの作品が多かったよね。ステンシルはいつも使う技法なんだ。バナナシャンクは粘土でつくって、その後東京でバナナのドローイングを描いたんだ。僕は、色々なコンテンポラリー・アーティストからも影響を受ける。新しいことに挑戦するのは、いつもエキサイティングなことさ。トムは粘土で作品をつくっているでしょ。泊っているホテルのショップにティーカップが売っていて、それがトムの作品みたいだった。粘土は大変だよ。形をつくって窯に入れ火にかけるでしょ。僕の粘土は乾いたら固まるからジョークみたいなもんだよ。火にかける場合は注意しなきゃいけないことがいっぱいあるからね。ショップに売っているティーカップはどうやって窯で壊れないようにつくったのか分からないよ。

今回の個展で力を入れてつくった作品の一つとして、バナナシャンクが挙げられます。色や形の愛らしさとナイフ、相反する要素が一つになっていると思います。そのような点があなたをとても象徴していると感じました。

M:僕はナイフのように暴力的な人間ではないよ(笑)。スケボーではアグレッシブな時もあるかもしれないけれど、ケンカになりそうな時、僕はその場を離れることにしているよ。殴り合いのケンカになったら長い戦いになるでしょ。その後に法廷での争いとか、自分も傷つく場合もあるからね。

東京でのスケートはどうですか?

M:あまりトリックはしなかったけど、他のスケーター達とビデオを撮ったりできて楽しかったよ。初日は警察が来たからバラしになって、次の日に戻ってやったよ。

アディダススケートチームの撮影の為に、世界中から錚々たるメンバーが集まってきましたよね。

M:今回集まった子達はみんなそれぞれ違うスタイルでやっているから面白いんだよ。Dennis Buzenitz、Leo Valls、Silas Baxter-neal、Nakel Smith、Kevin Lowry。とにかく皆違うんだ。NakelはLeoと全く違うスケートするし、それぞれがお互いに影響を与えているんだろうね。それぞれ違うスタイルのスケーター達をスポンサーするアディダスは凄いよ。スケボーシューズを作る会社がなくなった。DCはまだあるけど、昔はesやetnies、Emerica、Air Wark、とかいろいろあった。それぞれのメーカーにはそこに合うチームがいて、ガイ・マリアーノやグリーン・キャンベルは同じタイプのスケーターで、LakaiはGirlやchocolateに乗るようなシューズを作っていた。でも今、バラエティーあるシューズカンパニーが無い。マーケットが変わったからね。だからアディダスやナイキ、プーマ、コンバースはさまざまなスタイルのスケーター達をスポンサーすることを習ったんだと思う。難しいけどね。

東京の街でスケートするのは楽しいですか?

M:駐車場がいっぱいあるね。それとグラインドするバーもね。長期滞在できる街だよ。怖い点はイギリスみたいに車線がアメリカと反対だから転んだ時に注意が必要だね。

ニューヨークに今住んでいるけど最近はどうですか?

M:調子いいよ。ストリートが僕のスタジオなんだ。画材を全部持っていって道で作品をつくるんだ。ウォール街に住んでいて近くには大学があるんだけど、そのエリアでは道で何をしても誰も邪魔をしないんだ。たまに警察も足を止めて見ているけど、落書きをするのか見張っていたんだろうね。僕が画材で色々とつくっているのを確認するとみんなその場を去っていくんだ。

レイモンド・ペティボンと同じビルに住んでいるって話してくれたけど、お互いに交流はありますか?

M:うん、最近一緒にスケート・パークに行ったよ。彼の息子のボウにデッキを組んであげたんだ。奥さんのアイダも良い人だよ、よくビルの中で出会うね。彼は一緒にアートをつくろうとも言ってくれたから、どんな形が良いか今考えているんだ。彼の作品は好きだし、エキサイティングなプロジェクトだと思うよ。空から剣が突き出ていて先に血がついている作品。なんで空から剣が出てるのか考えなかったけど聖書からの引用なんだよね。知らなかったよ。

あなたのヒーローを教えて下さい。

M:ヒーロー?!ジーザスはヒーローだよね。僕はジーザス狂じゃないけどね。石打ちの刑についてジーザスは「あなた方のうちで罪のない者が最初に石を投げなさい」って言ったでしょ。面白いよね。だって罪を犯した事の無い人間なんていないんだもん。みんな自分が犯した罪を抱えて生きている。彼は哲学者だったんだ。ただ神の息子という周りの評価があったってだけで、それを考えなければクールな哲学者だったと思うよ。神の息子じゃなかったらもっと皆に好かれていたはずだよ。でもそれは彼のせいじゃないのにね。あとはスティーブ・マックイーン。ハンサムで女性から人気だったからね。

彼はゲイだったっけ?

M:それはジェームス・ディーンだよ。普通の男はハンサムなゲイみたいになりたいんだよ。色々勉強したんだけどね、ジェームス・ディーン、モンゴリー・クリフト、ゲーリー・グラント、ロック・ハドソンみんなハリウッドのゲイ俳優達だよ。K:好きな映画は?M:ブレードランナーが好きだよ(笑)。ブレード(剣)だしね。あの映画を見ると東京を思いだすね。

あなたの今後のプロジェクトを教えて下さい。

M:娘かな(笑)。僕にとって彼女が一番大切なプロジェクトだよ。もちろんスケートも楽しいけどね。

日本のファンへのメッセージを下さい。

M:映画の台詞なんだけど…『ハロルドとモード』に出ているルース・ゴードンが劇中で言っている「倫理観を越えたところを目指しなさい」かな。人生をごまかさないで生きろ、みたいな事を言っていたんだけど、正確に思い出せない。おりこうさんでいる事ばかり気にしないで、人生を楽しみなって解釈しているよ。いつも正しいことなんてできないし、間違ったこともしなきゃ。普段悪いことばかりしてるなら、たまには良いこともしなよってね。

INTERVIEW AND PORTRAIT BY KAZUMI ASAMURA HAYASHI
TRANSLATED BY TOMOKO OKAMOTO