DUNE libartane

KEI NINOMIYA INTERVIEW

黒が催す余情。限りなき創造の世界

闇夜の中にたびたび現れる少女の薄紅色の頬と、漆黒の中に佇むNOIR KEI NINOMIYAの洋服が、幾 度となく光るフラッシュに照らし出される。小雨が少女たちの柔らかい 黒髪に舞い落ち、細かい露がヴェールのように覆いかぶさる。漆黒の中で己を最小限に主張する、布の重なり、プラスティックで出来た鋲の均一な整列。露や布、鋲を纏った彼女たちは、電車のライトや街の明かりに照らされ妖精のように舞い、その場にいた者全てを魅了した。全ての光を吸収する色“noir”、その色をブランドネームに据えて2012年よりコレクションを発表している二宮啓。彼の世界観を表現すべく、フォトグラファーの沢渡朔に撮影を依頼し、それが現実のものとなった。沢渡氏にとって数年ぶりとなるファッション撮影の現場では、入り交じる緊張感と高揚感を側にいて感じた。二宮氏に初めて出会ったのは、撮影やインタビューとはまるで関係ない意外な場所で、友人からの紹介だった。彼のつくり出す世界観から 想像出来る人物像とは異なり、とても気さくでフレンドリーな印象を得た。雑談の中から、沢渡氏の写真展を見に行ったとの話になり、ちょうど同じ個展を観に行ったのでそこで話が盛り上がったのを覚えている。 漆黒の世界を際立たせる純白な少女性は、闇夜に浮かびあがる。その純白さほどに黒を引き立てるものは存在しないのではないだろうか? 二宮氏にインタビューをすることができたのは、2017S/Sコレクションを目前に控え、コレクションを生み出す重圧のまっただ中であった。クリエーションや生み出すものに対する答えは寡黙である。それはクリエーションに純粋であればあるほどに、言葉に表現するとそれに乗って消えてしまうのではないかと思える。ブランドコンセプトを明確にもうけ、各コレクションごとに言葉で表現してくれるデザイナーとは異なり、彼のインタビューは寡黙であるほど私たちの想像力を刺激し、その闇の中に余情を催すのだ。

 

ー出身はどちらですか?

 

二宮啓(以下、N):九州の大分です。

 

ー小さい頃はどのような子供だったんでしょうか?

 

N:この間も違うインタビューで答えたのですが、特別な何かはなく普通だと思います。特別な何かはなく、むしろどんなだったのかと周りに聞いてみたい。そんな感じです。

 

ーそれで、大学を卒業してからアントワープに?

 

N:そうですね。やはりアントワープに入った大きい理由は、そこを卒業したラフ・シモンズやマルタン・マルジェラが当時人気で、自分も興味があったということ。それと、学費が安かったという、その2点ですね。

 

ーご両親は普通のお仕事をされていたんですか?

 

N:公務員です。教師でした。

 

ーデザイナーになりたいと思ったきっかけはなんですか?

 

N:デザイナーという仕事をしたいという気持ちは、実はそれほどありませんでした。ただやはり何かつくること、美しいものを自分の手でつくれるようになりたいというのがスタートでしたね。なので自分は今はデザイナーという肩書きですが、正直本来は違うのかもと思っています。デザイナーという仕事というよりは、ものづくりをする延長で今の仕事をやらせてもらっているという感覚ですね。

 

ー海外に留学したという経験はいかがでしたか?

 

N:当時、自分は海外という気負いがなくて。アントワープに通う人たちは、まずアートスクールなどでアカデミックな勉強をしてから入学するじゃないですか。なのでみんなに「落ちるだろう」と言われてました。自分にはなんだか妙な自信のようなものがあったのですが…() 結果、皆の予想に反して合格することができたので、実は自分でも正直ピンとこなかったですね。

ーアントワープでの学生生活はいかがでしたか?

 

N:実際、授業じゃないような授業も多くてなので、そのときに知り合った人とか、そこに居たということがやっぱり自分の中では一番の財産になっているのだなと思います。

 

ー尊敬する人はいますか?

 

N:もちろん社長の川久保ですね。

 

ーCOMME des GARÇONSに入社以前からですか?

 

N:はい、貴重なインタビューや記事を読みながら「すごい人だな」と思っていました。作品が素敵なのはもちろんのこと、考え方や仕事に対する姿勢なども含めてそう感じていました。入社してからは間近で仕事をするようになり、また別の意味での凄みというのを改めて感じました。

 

ーその凄みっていうのはなんですか?

 

N:インタビューで答えていることそのままなんです。例えば、新しいものを作っていても、色々な流れの中で妥協せざるをえないことがあるじゃないですか。それを川久保は絶対にしない。本当に自分の発言その文言通りに生きている人なのです。仕事に対しても、たぶん川久保自身の生きる姿勢に対しても、彼女が思っていることを絶対に進めていくという姿勢ではないでしょうか。

 

ーなにか驚きのエピソードなどはありますか?

 

N:エピソードですか、驚きはいつもなんですけど。本当に新しいものを作るときに、どれだけ出来が良くても過去のものはNGなんです。自分が作った作らないに限らず、何処かで見たことがあるとか、ちょっと似ているのも絶対にNGです。それがどんなにかわいくて、綺麗だったとしても。そういうことは一切関係ないんです。

 

ーそういった組織でお仕事をされていますが、意識して心がけていることなどはありますか?

 

N:、社員としては社長である川久保の下、ものづくりをしていく一員だと思っています。なのでやはり仕事に嘘をつかないということ、そしてまじめに取り組むということはブレてはいけないなと思ってやっています。

 

ーブランドの名前にもなっているNoir(仏語で黒の意)ですが、すべての洋服が黒でデザインされていますね。それはなぜですか?

 

N:ひとつは黒が好きだというのと、それとパタンナー出身ということもあり、形やテクニックに比重をかけているので、シンプルで強いものを作るときに、色という要素が優先順位としてそれ程上位ではないということです。

 

ーご自身の好きな色は?

 

N:もちろん黒です(笑)。

 

ー二宮さんの考える女性らしさとは、また自身の作った服を着る理想の女性像というのはありますか?

 

N:正直特にないです。ただ個人的には自立した女性が良いと思うので、着てる服などは関係なく自分らしく生きている人が素敵だと思います。自分は自分の感性でものづくりをするので、それを強制したくはないです。自分の理想を押し付けるというのはポリシーに反します。自分の作りたい像と理想像とは必ずしも合致しません。

 

ーではデザイナーとして洋服を作る際にこだわっている点は?

 

N:先ほどの話に戻るのですが、何かしらの新しい要素と、着た人が充実感のような、気持ちが盛り上がるような要素がどの服にも盛り込めるよう心がけて作っています。

 

ー2016AWで何かこだわった点などありますか?

 

N:このシーズンは秋冬らしい表現をしたかったので、素材は毛足のあるもの、例えばファーなどをメイン素材にしたのですが、ただ単純にファーを使って豪華に、そしてラグジュアリーにというよりも、何か面白さをプラスしたいと思ったので、基本フェイクの素材しか使いませんでした。それをリアルに見えるように加工したりとか、毛足のある素材を意識して使用し、新しい表現を試みました。

 

ー本コレクションは色んな素材を使ったり、カットがあったり、毛並みや毛足が長いものを意識的に使ったと思いますが、テーマなどは特に設定していなかったとして、特徴として挙げられるものはそれ以外にはありますか?

 

N:リアルじゃない素材を使って遊ぶという点で言えば、スタッズですかね。スタッズも今回には金属のスタッズではなく、プラスチックのものであったり、どこか少し違う素材でリアルなものを見せるという部分にも比重を置いています。

 

ー日本から世界に発信するデザイナーとして、洋服を作るさいにそういったことに意識的に心がけていることなどありますか?

 

N:日本で、ということであれば産業ベースというのが、やはり弱くなってきていると感じます。縫製業全体としてという意味です。自分が作品を発表することによって携わってくれた方に少しでもエネルギーを与えられたり、「こうやってよかった」「こういうところで発表するものなのだ」と、作る喜びではないですけど、一緒にそういうものを共有できたら良いなとよく思ってます。

 

ーランウェイするようになってから何か心境が変わったりとかございますか?

 

N:いや、ショーをやっているというよりはクライアント向けのミニショーという形でやらせてもらっています。今までと違うのはメディアに出るということですね。見た人たちの反応を感じられたり、色々な方々の目に触れる機会が増えたので、さっきの話でもありましたが、加工場などにとってもそれは良かったなと思います。

 

ーショーの演出として音楽とか流れたりするのですか?

 

N:いえ、無音です。すごく緊張感があると思います。:

 

ーそれは意図的ですか?

 

N:洋服だけを見て欲しいので、すごくシンプルに構成して表現しています。

 

ー一貫してとても厳格な考え方だと思うんですが、それはそもそもの性格ですか?

 

N:どうでしょう。そもそもの性格はご存知かもしれませんが、そんなに真面目ではありません(笑)ただものづくりに関しては、やっぱりブレてはいけないと思っています。ブレはじめるとあまりこの仕事やる意味がないなと自分は思っているので。

 

ー今後の展開について教えて下さい?

 

N:色々な方に着てもらいたいと思っているので商品の幅やバリエーションを、もっともっと増やさないといけないと自覚しています。ですので自分のクリエーションという核の部分では絶対にクオリティを落とさず、愚直に作るしかないと思っております。

 

ーコレクション前の貴重なお時間ありがとうございました。

 

N:インスピレーションとかがはっきりしている方がインタビューがしやすいのでしょうが、無いのでなんとも言えないです。大丈夫でしたでしょうか?

 

ー大丈夫です、誰でも正直な答えのが魅力的です。じゃあちなみに好きなものはなんですか?

 

N:甘いものが好きです(笑)。

 

ー甘いものが好きなんですね(笑)。それと仕事ですか?

 

N:仕事?ものづくり??

 

ー仕事以外にモノ作りをすることはありますか?

 

N:最近は仕事ばかりで全然やってないです。

 

ーでは、以前は何かやられていたのですか?

 

N:前はキットを買って、暇な時にスノードームを作っていました。

 

ースノードーム?それはやっぱり黒いんですか??

 

N:いや、雪を彫金かなにかで可愛いモチーフにして作っていました。

 

ー可愛らしいですね。

 

N:意外と好きなんです(笑)。

 

ーじゃあ、甘いものは何が好きですか?

 

N:チョコレート。特にホワイトの方が(笑)。

TEXT AND INTERVIEW BY KAZUMI ASAMURA HAYASHI
文・インタビュー 林香寿美