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FRANCESCA DIMATTEO INTERVIEW

ニューヨークの素朴な新星

フランチェスカ・ディマッテオは立体が持つ力強さを絵画に、絵画が持つ物語性を立体に表現する。象徴的なイメージを抽象的な面や次元と掛けあわせ、確かに見覚えがあるのに見たことのない、繊細かつラフな作品をつくる。それらは当然、偶然によって出来たものではない。ディマッテオの作品には、確かな意図によって矛盾が入念に織りこまれている。特に、彼女の最近の作品である大きなセラミックの彫刻はアニメのようで、異なる時代や場所をつなぎ合わせて作られたフランケンシュタインのようだ。

クーパー・ユニオンを2003年に卒業したのち、コロンビア大学院を2005年に卒業した彼女への注目は、日を追う毎に増している。現在も拠点としているニューヨーク市で生まれ育ったディマッテオの作品には、生まれ育った環境が反映されたかのように、視覚的なシグナルや目がまわるようなバイタリティーがある。その独特の時間や速度の感覚が齎す不安定こそが彼女にとって最大の関心事であり、それは彼女自身とライフスタイルにも反映されている。編み込みをまとめあげた髪型、奇麗な肌に化粧っ気のない特徴的な容姿、個性的なビンテージの服を着こなす彼女はまだ34歳ながら、ミレニアム世代のニューヨーカーという枠には収まらない時代を越えたオーラを感じさせてくれる。

ディマッテオがアップステイトにあるスタジオでPippy HouldsworthGalleryでの個展の準備をしている最中に会いに行き、彼女のインスピレーション、作品の制作過程、そしてアーティストである旦那さんなどについて話を聞いてきた。

あなた自身について教えてください。

FRANCESCA DIMATTEO(以下、F):私はニューヨークのチェルシーでイタリア人とロシア人の移民の間に生まれ育ったの。ボロボロの崩れそうな壁と傷一つない奇麗な壁とが隣り合わせに存在している、ニューヨークによくあるコントラストにいつも惹かれていました。

あなたのペインティングと彫刻、作品を作っている過程のコンセプトは両方とも同じですか?

F:両方同じアプローチをしているわ。歴史的なものだったり物質的なものだったり、様々な事象から参考となる素材を用いて作業をしていく中で、これらの欠片たちを新しい言葉へと変える戦略を見つけていくの。バラバラだけれど全体として1つにする、消化するようなプロセスがあるの。

どうして粘土を使おうと思ったのですか?わたしから見ると彫刻は2次元である絵画の自然な延長にあり、その時の関心事やテーマは同じかと思うのです。でもあなたは表面上の立体という形にとらわれず、歴史やコンテンツ(中身)にもっと自由な形でフォーカスできている。こういったメディアを探していたのですか?

F:私は常に彫刻をつくるようにペインティングしているの。どうやって物がつくられ共存していくか、その正確さと不正確さに興味を持っていて、違う物質を絵画にする時にその戦略探しをするの。クラフトを作る時のシステムや過程を使って巨大なオブジェをつくることにも興味がある。だから陶器に使われる素材にも惹かれ、陶器が持つ〝小さい〞〝繊細〞〝かわいい〞というイメージを壊したかったの。クラフトはフェミニンなものと関連づけられるけれど、そのフェミニンの意味を拡大したかったの。

陶器の花瓶はあなたのペインティングと彫刻によく使われていますが、なにがきっかけで使い始めたのですか?また陶器の花瓶は何かの意味を含んでいる記号表記なのか、それともそのままの容器という意味で使っているのか教えてください。

F:私は家庭的、フェミニン、かわいいと思われているものをそうじゃなくすることが好きなの。サイズや対として合わないもの同士を組み合わせてそれを表現する。身近にあるものを、そうじゃなくするのよ。花瓶は家庭内のものを従来の場所ではないスペースに移動させるために描きはじめたわ。その後、ホーム・グッズというディスカウントショップで売っていた花瓶を買って型を取ったものを使うようになったの。確実なものより不確実なもの、不安定なものに惹かれるわ。実用的な陶器の形が好き。注ぎ口のあるもの、花瓶のように何かを入れる容器、持ち手の部分が男性器に見えるものや、または威嚇的に見えるものも。フェミニンという言葉に対する観念はもっとゆるくていいと思うの。これからも女性的であり男性的、かわいくて荒々しく、うるさくて静かなオブジェを作っていけたらいいなと思っているの。―評論家のロベルト・スミスはニューヨーク・タイムズにて、あなたの彫刻作品はペインティングとは全く別のものとして存在していて、とても満足感に浸れると書いていました。こういったコメントに対してどう思いますか?わたしは色々な要素がつまった作品をつくるから、彫刻作品は単体で見せることが大切だと思っているの。ペインティングのインスタレーションと見られないためにもね。残念なことに、要素を縮小させなくてはいけない場合も多いわ。見る側にとってはシンプルな展覧会の方が見やすいみたい。わたしは見やすくない展覧会をつくりたいのだけれど。

今は、作品を制作する過程のどの位置にいるのですか?

F:展覧会の後は、自分の作品を批判的に見るようにしてる。展覧会を開催して一ヶ月間は作品を作らず、一体何が自分の原動力か、作品がどうコミュニケーションをしているか、どうしたらより良くなるかを考えるようにしているの。2012年のサロン94での個展の後、2015年の個展には大きなシャンデリアの彫刻が必要だと明確に分かった。何故自分は制作するのかを作業前と後で常に考えてる。私の作品は「これを作ろう」という断固とした思いと、オープンなプロセスからできているの。作ろうと思った作品を作っている過程で自然に起きることはそのまま受け入れてる。だから、殆どの作品は方向性よりも問題解決から出来上がったものなの。

アーティストのガース・ウェイザーはあなたのパートナーですね。彼もあなたと同じくクーパー・ユニオンとコロンビア大学院を出ていますが、どうやって出会い、結婚まで至ったのですか?

F:クーパー・ユニオンの初日で出会い、1年生の頃からだから彼とは16年間つきあっているの。アーティスト以外の人とつき合うことは想像できない。私たちはお互いに様々な感情を理解し合い、心身共に必要とし合っているの。人にあまり期待しないのは、告知をしないで開催した個展と同じだと思ってる。だから私たちはお互いを強めあっているの。他の人たちはもっと努力をしていると思っているから、それが私たちのモチベーション。お互い違う意味で野心的だから合うの。私たちが一緒じゃなかったらお互い違う人生になっていたし、彼ほど私にインスピレーションをくれる人はいない。

ニューヨークのサロン94で展示していた『Bloemenhouder』について教えてください?

F:『Bloemenhouder』はオランダ語でフラワー・ホルダー(花器)という意味。この作品では2つの意味を持つのだけど、見た目は花器で花瓶を思わせる形をしている。殆どのタイトルは参考にしたものからつけているの。ペインティングにテキスタイルデザインの『Damask(ダマスク織り)』、『Jacquard(ジャガード織り)』、彫刻に『Iznik(イズニック)』、『Fetish(フェティッシュ)』とかね。

アーティストとしてニューヨークで最大のチャレンジは?また一番のやりがいは何ですか?

F:私はいまでもニューヨークに住み働いているけれど、最近2時間北にあるアップステイトに良い場所を見つけたの。ニューヨークでの一番の挑戦は自分にあったスタジオを見つけることだと思うわ。10年間ブルックリンにあるスタジオを使っていたけど、冷暖房はおろか窓もない場所なの。今でもそのスタジオは使っているけれど、アップステイトにあるスタジオは気候に関わらずいつでも作りたいものが作れる。ニューヨークにいて一番のやりがいは、世界で活躍しているアーティストたちと一緒に話が出来ること。競争はわたしを活気づけてくれるし、色々な角度から色々なものを見ることによって新たに何かを気付かせてくれ、そしてひらめきを与えてくる。ニューヨークに住むアメージングな人々との会話と、田舎での自分との会話、自分には両方が必要なの。

いまどんな作品を作っていますか?

F:今年の10月、ロンドンのPippy Houldsworth galleryで開催する『Confection』という個展用のペインティングと彫刻を作っています。巨大な彫刻をペインティングと一緒に展示する予定です。そしていまケーキのデコレーションを色々実験しているの。

猫のマティスは元気?

F:マティスの人生は何百倍も良くなったわよ。前はブルックリンのスタジオにいたけれど、いまは田舎にいるから。私たちはマンハッタンと行き来しているけれど、マティスはずっと田舎でアウトドアを楽しんでいるのよ。動物が動物らしくいるためには自由が必要だと思うの。ブルックリンに住んでいた時も時々外に離していたの、いま思うとバカだけれど。スタジオでの作業が終わったらマティスを呼ぶの、そしたら彼は1ブロック先から走って家に帰ってくるの。マティスは猫というより犬ね。

TEXT AND INTERVIEW BY CAROL LEE
PORTRAIT BY KAVA GORNA
TRANSLATED BY TOMOKO OKAMOTO