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DANIEL ARSHAM INTERVIEW

この世界をカラーで見るとだいぶ異様だよ(笑)

人間は生まれたその瞬間から”色”というものを見ている。視界に入る全てのものに色はついており、成長するにつれて色の持つパワーに影響される。アーティストのダニエル・アーシャムは大胆なインスタレーションが印象的だが、実は色盲である。数々の彫刻やインスタレーションを発表してきた彼は2015年までモノクロで作品を制作していたが、2016年の初めに色盲を正すメガネを作り、初めてカラー作品を展示したエキシビションを開催した。考古学的な視点で未来を捉えたアーシャムの作品は力強く、どこかシュールで人を引きつける。アーティストとしてのアーシャムに彼の色との関係を聞いた。

アートに目覚めたのはいつですか?

DANIEL ARSHAM(以下、D):一番はじめのきっかけは12歳のときに祖父にカメラをもらったこと。Pentax K1000だったかな。それで写真を撮り始めてそこから色々な方向に転換していったんだ。

なにからインスパイアされるのですか?

D:毎日の生活かな。特にこれといってインスピレーションを探すことはない。自分が惹かれたらそれが結果的に僕をインスパイアするだけだから、あんまり複雑なプロセスがあるわけではないです。

色盲だと聞いています。最近になって色がはっきり分かるメガネを手に入れたようですが、初めてそれをかけたときのことを教えてください。

D:最初は感動したし、同時にすごく目障りだった。今までくすんで見えたものが色鮮やかになったんだ。びっくりしたよ。最初の数ヶ月間はメガネをかけて生活していたんだけど、結局嫌になっちゃったんだ。色がハッキリ見えるのが好きじゃないことに気づいた。今は色を識別したいときにかけるだけ。メガネをつくってもらう前はモノクロの作品しか作らなかった。裸眼だと白と黒以外の色が分かりづらかったから。色が分かるようになった最近は、厳選したカラーパレット内の色を使っているかな。これから絵なり彫刻なりを始めるっていうときにメガネをかけて使いたい色を決めるけど、それ以外は基本的にかけないね。

あなたの作品は建築がルーツですね。彫刻作品も多く作られています。色がはっきりと分からなかったことにより、形に敏感になったと思いますか?それとも関係ないのでしょうか?

D:メガネをあまりかけなくなったことの大きな理由としては、色が正確に見えるようになったことによって、今まで気にしていたことに気付きづらくなってしまったからなんだ。建築物の細かなディテールを見過ごすようになってしまって。今までは色が無かったから(黙していたから)必然的に形に執着していたんだな、って最近分かったんだ。色が普通に見えていたら今の僕のアートは違うものになっていたと思う。

色が分かるようになったことで感じる、良いところと悪いところを教えてください。

D:この世界をカラーで見るとだいぶ異様だよ(笑)。普通の人たちにはこんな風に見えてるんだ、ってびっくりしたね。良いところとしては、いい経験になったよ。カラーで見るか見ないかの選択肢が手に入ったのは嬉しいよ。でも結果的にいつも視界がカラフルであってほしいっていう願望はない。やっぱりうるさいって思う(笑)。

健常者に見えなくて、自分にしか見えないものは存在しますか?

D:あるかないかって言われたらないと思う。ただひとつ言えることは、ある能力が劣っていることによって、その分他のことに集中できる。普通の人だったら色に気をとられて気がつかないところに気づけることが多いっていう意味では自分にしか見えないものは存在するのかも。触らなくても素材が見分けられたりするとか、そういうことはあるよ。

幼少期の自分について、また、なにか印象に残っているエピソードがあればお聞きできますか?

D:フロリダ州のマイアミで生まれ育って、自由を手に入れた瞬間に出てったね。でもマイアミの大自然、大きな沼、海…。本当に綺麗なところで育った。何万枚も写真を撮って過ごしたよ。

ファレルやアッシャーとのコラボレーションが印象的です。ポップカルチャーをユーモラスに作品に落とし込むのが得意なようですが、今のポップカルチャーであなたが思うことはありますか?

D:あまり自分の作品を”ポップ”だとは思ってない。ただ、誰にでも分かるものを題材として扱うようにはしている。そうすると入り込みやすいし、フックになるから。基本的に僕の作品は考古学的なものが多いんだけど、そのメッセージを伝えるためにも作品の形とそのアイテムが持つ一般的なイメージは精通していてほしいんだ。自分が1度は所有していたもの、思い入れがあるものがどこかの遺跡で発見されたかのように、不可思議にそして不気味に思ってほしくて。自分のものがいつかこうして発見されるのかも、っていう思いを引き出したかった。

今後、挑戦したいことはありますか?

D:様々な規模や形式で製作活動を続けてきたけど、ちょっと刺激が足りていない気がするから1歩踏み出したジャンルに挑戦したいと思っている。映像やオペラのステージデザインは是非挑戦したいね。そういうところには僕の持ち味が生かせるんじゃないかな。自分が既存するものに手を加えちょっとでもそのものの違った一面を見せることができたらいいなと思う。

好きな色は何ですか?

D:白かな。白は全てであると同時に何もないことだから。”白”という色素は色が何もない状態。でも光としての”白”は全ての色が交わっている色なんだ。存在自体が論理的には二分しているからそこに僕は惹かれる。単純に目で見たときに綺麗だと思うっていうのもあるんだけど(笑)。

日本でなにか展覧会など活動する予定はありますか?

D:今のところ予定はないけど、妻が日本人とフランス人のハーフだから日本にはよく行くし馴染み深いから将来的には何かやるんじゃないかな。

TEXT AND INTERVIEW BY NINA UTASHIRO
PHOTOGRAPHED BY GUILLAUME ZICCARELLI