DUNE libartane

CHERYL DUNN INTERVIEW

Cheryl Dunn is Boss.

2つの映画(自身の作品はこの他にも制作している)、3冊の写真集、そして多くの展覧会とフィルム・スクリーニングを世界中で行っている、フォトグラファーであり映像作家のシェリル・ダン。ストリート・スナップ、ファッ ション・エディトリアル、ポラロイド、フェスティバルの記録、そして忘れてならないのはスーパードープな存在感だったアップル・ウォッチのコマーシャルへの出演など、彼女のプロジェクトは多岐 にわたる。ストリートを生き抜く知恵と才能によって、彼女は伝説のチャンピオンのような存在となった。ニュージャージーに生まれ、80年代中盤にニューヨークへ。彼女は当時の完全な男性社会だったストリート、そしてドキュメント・フォトグラフィーの世界へ入る。そこでマーク・ゴンザレス、エド・テンプルトン、バリー・マッギーなどストリートのプロたちから信用され、彼らの友人となる。時間と共にシェリルはストリート・アート、スケートボード、自転車ギャングだけでなく音楽やファッション業界からも尊敬を得ていく。女性アーティストによるドキュメンタリー映像の先駆者としてマーガレット・キルガレン、マーサ・クーパー、マリー・エレン・パークを撮り、そして彼女たちと同じようにストリー ト・アート、ひいては写真界においても女性アーティストの先駆者となった。また彼女はジュディス・スコット、ダン・ミラー、ウィリアム、ジェローン・スプルイルを生み出したクリエイティブ・グロースという名の、障害を持つアーティストを支援するオークランドにあるアートセンターへ多くの影響を与えている。シェリルの最新作品集『Festivals Are Good』は、過去10年間に行ったコンサートやミュージック・フェスティバルで撮ったミュージシャン、そして音楽への自身の愛を綴った写真集だ。若さ、覚悟、瞬間、クレージーな思い出、そしてファンの姿。「私はファンのファンなの。これらの経験は全て一緒にいた人たちから得たものね。何年間もお金を貯めて来たコンサートの最前列でつぶされそうなキッズ、友達からまだ行っているのかと呆れられながらも自前の折りたたみ椅子に座って見ている長年のファン、オタク、体育会系、ガキ、ストーナー、ヒップスター、そして社会から見放されたもの。彼らみんなが一つの場所で、音楽への純粋な愛をシェアしているの」。このように多才であり、様々な人たちから信頼されているシェリルのプロジェクトは止まることを知らない。現在は2本の映像作品を制作していて、一つはクリエイティブ・グロース、そしてもう一つは2009年に亡くなったアーティストでありダウンタウンのバッド・ボーイ、ダッシュ・スノウについてだ。15年以上使っているというマンハッタンのファイナンシャル・ディストリクトにあるシェリルのスタジオへ行き、話を聞いた。外では雪が溶けはじめ、カメラとケーブルがカオスになっている空間で過去を思い出し合ったり、彼女の新しいプロジェクト、トランプ政権下でアートと真に向き合ったことについて聞いたりした。

まずはクリエイティブ・グロースのプロジェクトについて聞かせてください。いつ始まったのですか?

CHERYL DUNN(以下C):15年前です。友達のキム・ハストレイター(ペーパー・マガジン)がクリエイティブ・グロースで制作されたラグやセラミックの展覧会を企画したの。その時オークランドに住んでいたから、行ってみようと思った。昔は車の展示場だったから、広くて天井も高いアート・スタジオだったわ。閉館間際、そこにダン・ミラーというアーティストが居たの。彼はみんなのことを〝ジュディー〞と呼ぶのよ。だから私にも近寄ってきて「ジュディー?」と聞いてきたわ。彼の他にもアーティストが沢山いて、みんなフレンドリーだった。友達のカレン・キンメルがアーティスト・イン・レジデンスを受けたときに、彼女の制作過程をドキュメントするため、またクリエイティブ・グロースへ行ったの。そして6カ月間、月に一週間ここへ 通ってこの世界をドキュメントしていることに夢中になっていくうち、様々な事柄への考え方が変わったわ。彼らが作るアートを広めたくて、マシュー・ヒッグスやキム・ハストレイターと共に雑誌に記事を掲載したり、展覧会を企画したりした。2、3本の動画をニューヨーク・タイムズに、そしてファレル・ウィリアムズのYou Tubeチャンネル〝I Am Other 〞へシリーズを制作したわ。長い期間ドキュメントする必要があったから、もともとこのプロジェクトをテレビのシリーズかフィーチャー・フィルムにしたかったの。だから色々なところへ投げたわ。最近アップルと、アップル・ウォッチを使い何かを制作するプロジェクトの打ち合わせがあったの。担当者が私の携帯に貼ってあったクリエイティブ・グロースのステッカーを見たときに繋がったの、彼らと一緒に何かをすべきだって。シリコンバレーにあるIT企業は、広く遠くまで慈善活動を一緒にする相手を探しに行くのに、自分たちの身近にあるクリエイティブ・グロースを知らなかったの。

今はどこまで進んでいるの?

C:時間があるときにクリエイティブ・グロースへ行き撮影しているわ。『6才のボクが、大人になるまで。』みたいに完成までに20~30年かかるわね。歴史をドキュメントする者として私はアーティストとニューヨークを撮るけど、その時のイベントに行って、そこで起きたことや人々が違う人生のステージにいる様子を撮り、ハードドライブに入れる。ただその瞬間だけではダメなの。10年から15年後に、それが〝物語〞となるの。

ダッシュの映像について聞きたいんだけど、まだ早いかしら?

C:まだ早いわ。2週間前に作りはじめたばかりだから。フィルム・フェスティバルに行くと監督とのQ&Aが 設けられていて、「完成までにどのくらいかかったのか?」と聞かれるの、ドキュメンタリーでよく聞く答えは7年ね。多くの場合、ドキュメンタリーといったら誰かの生き様についての話で、それを 90分で伝えなくてはいけないの。とても難しいことだわ。90分の映像を作るために、90分しかリサーチをしないなら、それはクソゴミな映像でしょう。大きな大理石からダビデ像を作りだすような作業よ、分かる?削って、削って削りまくって一番大切なことに辿りつくの。この作業に時間をかければかけるほど、より良く、より豊かに、より深い感情の物語になるの。特に自分も含め、多くの人にとってとてもエモーショナルな題材でしょ。

好きなドキュメンタリー映像について教えて。

C:70年代に16mmで撮られた作品が好き。「どうやったらカメラの存在を感じさせないくらい機材との距離間が近くなれるのかしら?」と感嘆してしまうの。70年代と80年代に撮られた作品には驚かされるわ。レス・ブランクによる『フィツカラルド』を制作しているヴェルナー・ヘルツォークのドキュメンタリー『Burden of Dreams』、それにフレデリック・ワイズマンの作品は素晴らしいわ。あと『Best Boy』もね。

映像作品に対して、自身の写真作品のことはどう思っているの?

C:両方深く繋がっているわ。写真についての映像作品を作ったこともあるし、私の映像には写真をよく使っていて、今回のプロジェクトにも写真は沢山使うわ。基本的には写真も映像も両方同じように扱っているの。映像のほうが明らかに時間がかかるんだけど、私はその両方を同時に作業するのが好きなの。去年の4月からシャネルのための映像にかかりっきりで、結局9月までかかっちゃったの。その間できなかった写真のプロジェクトや編集作業などをするのに時間を使っているわ。それに、ストリートへの顔出しもね。特に今のアメリカの政治状況の中、街でプロテストを撮るのはとても楽しいわ。私はずっとプロテストを撮っているの、これからもずっと続けるわ。外にでたらいい写真を数枚取れる、うれしいことよ。だから私には両方必要なの。

どんなときに良い写真が撮れたと思えるか。

C:見た瞬間に他とは違うと分かるの。ドラマチックな光、素晴らしい構図、そして魅了される何か。答えがでていない疑問。今必要だと感じるのは政治的メッセージ。

今回掲載した写真は最新作の『Festivals Are Good』からだけど、初めて行ったコンサートは?

C:ジャクソン・ファイブよ。

うそ!

C:行きたくなかったわ。母がモールで開催するコンサートのチケットを買ってきて、その時は12歳くらいだったかしら。既にジャクソン・ファイブはクールじゃなかった。母がサプライズでチケットを買ってきて…でもコンサートはアメージングだったわ(笑)。

PORTRAIT BY HERSELF
TEXT AND INTERVIEW BY CAROL LEE
TRANSLATED BY TOMOKO OKAMOTO