DUNE libartane

BLAKE INTERVIEW

散らばった粒子が浮かび上がらせる、音のない足跡

さて、何気なくページをめくる中で彼の写真と出会ったとして、はたしてあなたはどのように感じただろうか。モノクロのネガフィルムに投影され、一枚一枚手焼きされたイメージたち。焼き込み具合からプリントへのこだわりがにじみ出ているその写真たちには、おそらく本人は意識していないだろうが、過去の偉大なる写真家たちの影響が見受けられる。そうして彼が印画紙に落とした無数の粒子は、今日の異質で歪んだ世相を克明に浮かび上がらせている。単にドキュメント写真と呼ぶことができないのは、そこに明確な作意や意図が介在しないからだろう。何か使命をもって、何かを伝えるべくして撮られたのではなく、あくまで自分の眼前での出来事を咄嗟に切り取っている。漆黒の闇に浮かぶ宗教施設のネオンも、遊び半分のケンカに興じる友人も、撮った理由に大きな差はないのだろう。強いて言えば「撮りたかったから」という単純明快な理由があるだけだ。既に写真が市民権を得てから長い時間が経ち、写真で出来るあらかたの表現は出尽くしてしまった。ここ二十年で台頭したデジタル表現に皆が飽き始めたことで、昨今はフィルムへの回帰がプロにもアマにも起こっている。本当に好きだったり必要性があったりするのなら納得できるが、フィルムが持つ特有の〝味〞に邪な可能性を見出しているケースも多く、そうやってもたらされる写真にはどうも「アートっぽく見えれば良し」といったきらいがある。またその他の傾向として、コンセプトが先行する写真が増えていることも挙げられる。放浪の旅の様子や戦場の実情を伝えるといった道理に適ったものではなく、小難しいストーリーで観客を変に説得しようとしたり、大したものでもないのにどうにかありがたく見せたりしている写真で巷は溢れかえっている。スタイルは模倣や惰性からは決して生まれないわけで、こうした状況は決して喜ばしいことではない。そんなとき、彼の登場は感謝すべき事柄なのではないかと思う。クライアントに媚びへつらう必要も、自分の才能を他人に無理に認めさ せる必要もない彼の写真には、混じりっけなしの真実のみが写る。自分の撮りたい瞬間を捉えるには、ゆっくりと準備したり考えたりしている時間はない。決定的瞬間は、すぐに逃げ去ってしまうからだ。では、才能や技術なんてものが一切なくても、決定的瞬間を捉える一番簡単な方法はなんだろうか。それは、自らの身を決定的瞬間に置き続けることだ。写真の撮り手がその現場に居合わせ、ファインダーを通してその目で見たということ。それは絶対に誰にも否定することは出来ない。フィルムに焼きついた影こそが揺るがぬ証拠、まさに〝百聞は一見に如かず〞だ。そうして彼の写真をみつめたとき、数多の視線がレンズに向けられていることに気づく。その中には親しみを込めたものから、明らかに敵意を向けているものまで様々だ。では、ここまで眺めてきた写真の撮影現場に確実に居た彼は、その場所で何をしていたのか。そのとき一体どんな心境だったのか。場所はどこで、何時ごろだったのか。そして、彼は一体何者なのか。そういったことは、本来写真自体の良し悪しには一ミリも関係ない。何も知らずに作品を見た人が最初に思ったことこそ真実なのだから、前情報や知識などは大した意味を持たない。しかしながらたいていの場合、人は惑わされる。評判や知名度、噂やウンチクの類が、人の直感を曇らせる。今日における芸術が持つ性質を考えればそれは仕方のないことなのだが、本当に芸術が担うべきは錬金術の代わりではなく、人々の心を解放することだ。気の向くままに自分の足で往く彼が切り取った情景には、そんな力がある。創造と破壊、喧騒と静寂、シリアスと冗談の境目を行ったり来たりしながら、彼は今日もどこかで シャッターを切っていることだろう。誰に命令されるわけでもなく、自分の欲求に逆らわず、気配だけを残し、音もなく立ち去っては、嬉々として。

写真を撮るようになったきっかけを教えてください。

BLAKE(以下B):最初は携帯のカメラでスナップショットを撮っていたんだ。そのあとで、友達の勧めでフィルムカメラを使うようになった。

カメラはいつも持ち歩いているのですか?

B:ほぼ常に首からぶらさげてるよ。

好きな被写体はなんですか?

B:撮るのはどれでもなんでも好きだし、楽しんでる。自分が興奮するような場面や人と出会ったときに、シャッターを切るかな。

プリントも自分でしていますが、フィルムカメラを使う理由を教えて下さい。

B:記録とか記憶に手で直に触れられる、ってのがいいよね。

今まであなたが撮った中で一番気に入っているのはどんな写真ですか?

B:特にないね。

好きな写真家はいますか?理由も教えて下さい。

B:たくさんいすぎるけど、誇りを持って本当の仕事をしている人は全員良いと思う。

今後のプロジェクトに関して教えて下さい。

B:ここ二年間の写真を掲載した本を、近いうちに出すよ。

TEXT AND INTERVIEW BY SOUSHI MATSUKURA