DUNE libartane

SABEKST INTERVIEW

ファイブボローを制覇した、マッドサイエンティスト

 

ブルックリンの倉庫街の一角、その中の一室にあるSabekstのスタジオを訪ねた。無機質で、どことなく不気味な貨物用のエレベーターを出て彼のスタジオへ。すると壁一面には制作途中のアートワーク、棚にはペインティングのインク缶、刷毛や丸められたキャンバスなど、いわゆるアーティスト・マストアイテムズがずらりと揃っている。その横にはマシーンの設計図、何やら怪しい雰囲気の漂う機械のパーツや無数のケーブル、バズーカ砲のような形をした改造済みのガジェット……およそグラフィティライターには似つか わしくない数々の道具類が無造作に置かれている。一体彼は何を制作しているのだろうか。ニューヨークのストリートにおいて、彼の名を知らない者はいない。それほどに彼の所業は圧倒的だ。誰にも真似することの出来ないハンドスタイルによって生み出されるタグと、その異形さとサイズ感によって見る者に恐怖を与える顔”。それらによってブルックリン、ブロンクス、マンハッタン、クイーンズそしてスタテンアイランドのニューヨーク市の5つのボローは、その景観を一変させられてしまった。ニューヨーク市全域の制覇、通称“オールシティー”を成し遂げたグラフィティライターは伝説としてアンダーグラウンドの歴史に名を刻まれ、人から人へと語り継がれる。その想像を絶する挑戦を、彼は少なくとも既に3回もこなしているという。まさに規格外だ。それ故、ストリートでの彼の功績はライター達の間では周知の事実となっている。しかしながら、彼の素性は 今日に至るまで闇に包まれたままである。今回は敢えてそんな彼のストリートでの活動に関しては触れずに、アーティストとしての側面をフュー チャーしてみることにした。

ガジェットを使ったペインティングについて

SABEKST(以下、S):子供の頃にものをバラバラにするのが好きだったことが、現在の創作活動に影響を与えているように思います。これを見て下さい。車のワイパーのモーターを使ったロボットです。これが作動すると、まるで歩いているかのように移動し始めます。そして、紙の上を移動しながら勝手にペインティングしてゆくのです。色を決めるのは私ですが、一度機械を作動させたらどのようになるか全く予測できません。でもどうです?この動き方。生き物みたいじゃないですか?これも僕が作ったマシーンで、幾何学的なパターンを描くドローイング・マシーンです。ペンをセットすると回転し始めます。すごいのは、ほら、スピードをコントロール出来るんですよ。それによって濃淡が出 せます。他に変わり種としては、ガスで作ったペインティングもありますよ。ガスを使うとペイントやインクが凍ります。その後に水を加えると、ペイントの濃度が下がる。それからヒートガンで熱を加える。これを使った作品は数点ありますね。あとはですね、この筒状のマシンガンを見て下さい。筒の先にペイントの缶を入れて、ガスの圧力で缶自体を標的に向かって飛ばすんです。壁やキャンバスに向かってね。ペイントが爆発した感じが好きですね。これは今週末にストリートで実験してみようと思っています。これが次に作りたいマシーンの設計図です。ここに4つの車輪があります。車輪の代わりにペイント缶をセットして車のようにそれをスピンさせるんです。するとうまく色が 混ざり合うはずなんです。回っている間は壁や床にずっとペンキをまき散らす、というイメージです。私は機械を設計するプロではないので、アイディアをスケッチにしてその道のプロから指南を受けて制作しています。これらマシーンを使うときは、ペインティングのゴールは想定していません。結果をコントロール出来ないという点がいいのです。出来上がったこれらのペインティングを抽象画と呼ぶ人もいますがね。ガスや熱をこんなふうに利用できるのは科学的成果ですが、ペイントのゴールは数学者にもわかりません。それは色々なプロセスを経て偶発的 に辿りつくものなのです。それが醍醐味ですね。

偶発的に出来上がるアートワークの一例、ストリップクラブの女の子を呼んでペインティングを試 みることについて

S:ある晩、友達と遊んでいたときのことです。誰ともなく「エスコートガールズを呼んでパーティーしよう。」ということになりました。僕は「じゃあ彼女たちに絵を描いてもらってそれを売ろうぜ。」と言ったのですが、誰も取り合ってくれませんでした…。それから何日かして、ストリップクラブのオーナーから新装されるストリップクラブにペインティングをして欲しいと頼まれました。ダウンタ ウンにあるクラブハウス・ギャラリーのオーナー、ジェシーの所でグループショーをしたのがきっかけで、彼がその話をまとめてくれたんです。漆黒の部屋にカラフルな色のスプレー缶を爆発させて、ネオンカラーの美しい部屋に仕上がりましたよ。それがきっかけで、ストリップクラブの女子達を呼んで下着姿で一緒にワインを飲みながら、フォトペーパーにスプレーやらペイントやらを使って描いてもらった、というのがいきさつです。作品は20点くらいあります。彼女達がどんなアートを作るのか、単純にその点にだけ興味があります。皆アートを作るとは知らされずに来たので、楽しんでくれましたよ。彼女達はすごくアメージングなものを創りだすんです!僕はただ画材を並べるだけで、仕上がりは彼女達の楽しみ方次第ですね。

INTERVIEW BY KAZUMI ASAMURA HAYASHI
PORTRAIT BY KAZE WAR